top of page

 CEO Message

2017年6月 アメリカ、パリ協定離脱

 

 ついにアメリカがパリ協定離脱を発表しました。去年の12月にも懸念を記しましたが、今回正式離脱ということで改めてコメントしておきたいと思います。我々再エネ産業だけでなく、様々な問題が起きてくるでしょう。

 

 第一はアメリカに対する政治上の不信感。そもそもパリ協定はオバマ前大統領がリーダーシップを取り、中国との電撃的合意によってスピード発効された経緯があります。アメリカ自らが取りまとめた国際協定を、大統領が変われば反故にされる。これでは国と国との長期的な信頼が醸成されないのは自明の理です。ドイツのメルケル首相が「今後アメリカには頼れない」と述べたように各国がアメリカへの信頼を失い、アメリカは自ら国際社会での影響力を低下させつつあります。

 

 第二は地球温暖化問題での中国の台頭。トランプ政権発足の直前、習近平国家主席はダボス会議で「中国は自由貿易を擁護する」との発言を行い、世界経済でリーダーシップをとる姿勢を明らかにしています。共産主義国家が自由主義経済のリーダーとは笑っちゃうくらいのパラドックスですが、現実はその方向に進んでいます。パリ協定に関しても李克強首相がすかさずEUに対し、パリ協定の推進一致を世界にアピールしています。経済でも温暖化問題でも中国が主役となれば、実質的な世界のリーダーは中国へとシフトしていきます。

 

 第三は地球温暖化へのグローバルな取り組みが停滞する可能性。参加国約200、非参加はシリアとニカラグアだけ(+アメリカ)という現状ですが、取り組みの真剣さは国によって違いがあります。「みんな参加するから一応は入っとくか」みたいな国もあるわけで、そこで温暖化ガス排出量世界2位で中心となってやってきたアメリカが離脱すれば、真面目に取り組まない国が増えるのは間違いないでしょう。

 

 トランプ大統領は 「パリ協定は不公平。他国が我が国を経済的に利用する仕組みだ。パリ協定を守ることで最大270万人の職が失われる」と述べたようですが、いったいどこからそんな数字が出てきたのか。アップル、グーグル、アマゾン、テスラ、アメリカは新しい産業、新しいビジネスモデルへの対応で富を拡大させてきました。これからどれだけ石炭、鉄鋼、自動車産業を拡大させても、アメリカ国民全体に富が再分配されるような事態には決してならない。ニューヨークの1980年代の不動産屋で、現在のグローバル経済を理解していないトランプ大統領には、そのことが理解できないのですね。

 我々再エネ事業者だけでなく、今後の世界に与える影響がとんでもなく大きいミスジャッジ。世界の不安定化が止まりません。

bottom of page